・2035年のエンジン禁止規制に対し、フェラーリは「E-fuel(合成燃料)」でV12を守る道を選んだ。
・ポルシェやランボとは異なり、生産台数を追わず「希少性」と「自社技術」を貫く姿勢は変わらない
今日は2月18日。
自動車史にその名を刻む巨人、創業者エンツォ・フェラーリの誕生日です。
もし彼が今の時代に生きていたら、世界中で叫ばれる「サステナビリティ」や「脱炭素」という言葉を聞いて、どんな顔をするでしょうか。
「エンジンこそが私の魂だ」と怒るかもしれません。
それとも、レースで勝つための新しいルールとして、冷静に受け入れるかもしれません。
僕たちクルマ好きにとって、フェラーリの電動化は期待よりも不安が大きいですよね。
「モーターになったら、あの官能的な音はどうなるんだ?」 「フェラーリらしさが消えてしまうんじゃないか?」
そんな不安に対し、フェラーリが出した答えは、単なる環境規制への妥協ではありませんでした。
彼らが目指しているのは「パフォーマンスの再定義」です。
今日はエンツォの誕生日に、フェラーリが公開した最新の戦略レポートを読み解きながら、2030年に向けた彼らの本気度について語り合いたいと思います。

ついに明かされた「初のピュアEV」の正体

フェラーリ初の電気自動車(EV)。
これだけで拒絶反応を示すファンもいるかもしれません。
でも、少し待ってください。
彼らが作ろうとしているのは、ただのエコカーではないようです。
2025年末に公開、2026年に発売が予定されているこのモデル。
スペックの詳細はまだ秘密ですが、漏れ伝わってくる情報は強烈です。
理論値で1000馬力を超えるポテンシャルを持つといわれています。
特筆すべきは、その制御技術です。
4つのモーターを独立して動かすことで、これまでのガソリン車では不可能だったレベルの「トルクベクタリング(駆動力の制御)」を実現するとのこと。
つまり、物理法則を無視するかのようなコーナリングが可能になるわけです。
そして、一番気になる「音」について。
フェラーリは「EVは無音ではない」と断言しています。
ここが重要です。
スピーカーから偽物のエンジン音を流すようなチープな真似はしません。
モーターやギアが回るときに発生する本来の機械音を、特許技術を使って増幅し、ドライバーに届けるそうです。
「新しい楽器を作る」
彼らはそう表現しています。
エンジンの爆発音とは違いますが、精密機械が唸るような、新しい種類の興奮がそこにはあるかもしれません。
E-Building:聖地マラネッロの新たな心臓部

EVを作るにあたって、フェラーリがこだわったのが「垂直統合」です。
ちょっと難しい言葉ですが、要するに「大事な部品は全部自分で作る」ということ。
多くのメーカーがバッテリーやモーターを外部から買ってくる中で、フェラーリは違います。
マラネッロの本社工場に、新しく「E-Building」という施設を建てました。
ここで、電気自動車の心臓部であるバッテリーパックやモーターを自社生産します。
なぜそんなことをするのか。
それは、技術の核心部分を「ブラックボックス化」して、他社に真似されないようにするためです。
ハンドリングや乗り味を決める重要な要素を、サプライヤー任せにしない。
このあたりに、技術屋集団としてのフェラーリのプライドを感じますね。
内燃機関は死なない。「E-fuel」という希望

「EVの話はわかった。でも、V12エンジンはどうなるんだ?」
そう思ったあなた、安心してください。
フェラーリはエンジンを捨てるつもりはありません。
欧州では「2035年にエンジン車の販売禁止」という厳しいルールが決まりかけました。
しかし、フェラーリはここで粘り勝ちします。
「カーボンニュートラル燃料(E-fuel)」を使えば、2035年以降もエンジン車を販売できるという例外規定(デロゲーション)を勝ち取ったのです。
E-fuelとは、CO2と水素から作る合成燃料のこと。
燃やしても、大気中のCO2総量は増えないとみなされます。
フェラーリにとって、これは単なる新車の話だけではありません。
過去に生産されたフェラーリの、なんと90%以上がまだ現存しているというデータがあります。
それらのクラシック・フェラーリを、将来も公道で走らせ続けるためには、ガソリンに代わる燃料が必要不可欠なのです。
「エンジンという機械を捨てるのではなく、燃やす燃料を変える」
この選択は、内燃機関を愛する僕たちにとって、最高の希望ではないでしょうか。
F1の世界でも、すでに持続可能燃料の導入が進んでいます。
レースで鍛えた技術を、市販車にフィードバックする。
エンツォがずっとやってきたことが、サステナビリティの文脈でも行われようとしているのです。
マラネッロ工場の「グリーン・エボリューション」

クルマそのものだけでなく、それを作る工場も変わろうとしています。
フェラーリは、工場の脱炭素化にも本気です。
これまで、工場では「トリジェネレーション」という、ガスを使って電気・熱・冷水を同時に作る高効率なシステムを使っていました。
しかし、ガスは化石燃料です。
フェラーリは、この設備をあえて廃止することを決めました。
代わりに、太陽光などの再生可能エネルギーへ完全にシフトするのです。
2030年までに、工場から出るCO2(スコープ1と2)を90%削減するという目標を掲げています。
地域と共に生きる
面白いのは、これらの取り組みが工場の中だけで終わらないことです。
工場の屋根で作った電気を、周辺の地域住民と分け合う「エネルギー・コミュニティ」という仕組みを作りました。
また、「ボスコ・フェラーリ(フェラーリの森)」というプロジェクトで、工場の周りに木を植え、環境再生にも取り組んでいます。
フェラーリというブランドは、マラネッロという土地と切り離せません。
地域の人に愛され続けることも、ブランド存続の条件だと考えているのでしょう。
ライバルたちとの違い(ポルシェ・ランボルギーニと比較して)

ここで、同じスーパーカーブランドであるポルシェやランボルギーニと比べてみましょう。
フェラーリの立ち位置がより明確に見えてきます。
【ライバルとの戦略比較】
- ポルシェ
- 年間30万台規模を生産。
- VWグループの資源を活用し、幅広いラインナップを展開。
- EV化にも積極的(タイカンなど)。
- ランボルギーニ
- アウディ(VWグループ)の技術を活用。
- ウルス(SUV)の大ヒットで台数を拡大中。
- フェラーリ
- 年間1万台〜1万3千台程度に限定。
- 他社のプラットフォームは使わない「完全自前主義」。
- 台数を追わず、1台あたりの利益率を極限まで高める。
フェラーリの最大の特徴は「量産しない」という強みです。
「常に市場の需要より1台少なく作る」
これはエンツォの遺訓とも言える言葉ですが、今の経営陣もそれを守っています。
希少価値があるからこそ、ファンは熱狂し、高い価格でも購入したいと思う。
グループの共用部品を使えばコストは下がりますが、フェラーリはあえて「技術的主権」を貫きます。
「ネジ一本までフェラーリでありたい」というこだわりこそが、ブランドの価値を支えているんですね。
Q&A:よくある疑問を整理してみよう
これからフェラーリの未来を考えるうえで、よく話題になる疑問をまとめてみました。
Q1:結局、エンジン車はいつまで買えるの?
A: フェラーリは2030年以降もエンジン車を残す計画です。E-fuel(合成燃料)の普及次第ですが、ハイブリッド車を含めれば、かなり先まで内燃機関を楽しめるはずです。
Q2:EVのフェラーリなんて、音が静かでつまらないのでは?
A: フェラーリは「音」を極めて重要な要素と考えています。特許技術を用いて、モーターとギアの機械的なサウンドを増幅させる仕組みを開発しており、無音にはなりません。
Q3:E-fuelってガソリンスタンドで入れられるの?
A: 理論上は今のガソリンスタンドの設備そのままで使えます。ただ、生産コストが高いため、普及にはまだ時間がかかると言われています。まずは富裕層向けの趣味のクルマから広まっていくでしょう。
まとめ:跳ね馬は、静かに歩くつもりはない

フェラーリが描く2030年の販売比率は、以下のようになっています。
- EV:40%
- ハイブリッド:40%
- 内燃機関:20%
このバランスこそが、今のフェラーリが出した現実的な解答です。
すべてをEVにするわけでもなく、頑なにエンジンだけに固執するわけでもない。
時代の変化(サステナビリティ)に対応しながら、ブランドの核である「走る喜び」を守り抜く。
フェラーリにとってのサステナビリティは、地球環境のためであると同時に、ブランドの「生存本能」そのものなのだと感じます。
V12エンジンの咆哮も、EVの未知の加速も。
どちらも「フェラーリ」として楽しめる未来が、すぐそこまで来ています。
天国のエンツォも、今のフェラーリを見たら「悪くないじゃないか」と、サングラスの奥でニヤリと笑ってくれるのではないでしょうか。









