・プラスチック削減の「実績」と、静かに撤回された目標の背景を数字で読み解きます。
・世界と日本の決定的な違いから、企業サステナビリティの現実と限界が見えてきます。
世界一の飲料メーカーが背負う「責任」と「現実」
ここ数年、気候変動やプラスチック汚染のニュースを見ない日はありませんよね。
特にグローバル企業にとっては、環境対策はもはや「やってますアピール(CSR)」ではありません。
生き残るための「事業戦略」そのものです。
世界最大の清涼飲料メーカーであるコカ・コーラシステム。
彼らの動きは、業界全体の基準になるといっても過言ではありません。
でも、実際のところはどうなんでしょうか?
「環境に優しい」というイメージの裏で、本当に環境負荷を減らせているのか。
それとも、ビジネスの拡大とともに負荷は増えているのか。
今回は感情論を抜きにして、2024年から2025年にかけての最新データをもとに、その実態をシビアに見ていきたいと思います。
世界が注目する「プラスチック戦略」の現在地
野心的な目標と現実のギャップ
コカ・コーラは「廃棄物ゼロ社会(World Without Waste)」という、かなり大きなスローガンを掲げています。
響きは素晴らしいですよね。
しかし、現実はそう甘くありません。
事業が成長してたくさん売れれば、当然パッケージの量も増えます。
実際、新品のプラスチック(バージン・プラスチック)の使用量は減るどころか増えているんです。
データを見ると、2023年の283万トンから、2024年には294万トンへと増加しています。
ここに、企業のジレンマがあります。
「売り上げは伸ばしたい、でもプラごみは減らしたい」。
この相反する課題をどう解決するか、まだ決定打が見つかっていないのが現状です。

衝撃の戦略変更
そして2024年の年末、業界がざわつく出来事がありました。
「2030年までにリユース容器の比率を25%にする」という目標。
これが実質的に撤回・修正されたんです。
なぜだと思いますか?
理由はシンプルで「コスト」と「消費者の行動」の壁です。
リユース、つまり瓶などを回収して洗ってまた使う仕組みは、めちゃくちゃお金がかかります。
それに、私たち消費者も「飲み終わったらその場で捨てたい(リサイクルボックスに入れたい)」という利便性をなかなか手放せません。
企業努力だけでは限界が来た、というシグナルとも取れます。
NGOからの視線
こうした状況に対して、環境NGOなどの監視の目は厳しくなっています。
実は、コカ・コーラは6年連続で「世界最大のプラスチック汚染企業」として名前を挙げられているんです。
彼らからの指摘はこうです。
「リサイクルしますと言いながら、結局は使い捨てプラスチックの総量を増やしているじゃないか」
いわゆる「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)」ではないか、という厳しい批判ですね。
ビジネスとして成長し続けることと、絶対量を減らすこと。
この矛盾に対する明確な答えは、まだグローバル全体では出せていません。

なぜ「日本のコカ・コーラ」は世界から称賛されるのか?
世界をリードする「ボトルtoボトル」
グローバル全体で見ると苦戦しているように見えますが、視点を「日本」に移すと景色がガラリと変わります。
日本のコカ・コーラ(CCBJH)は、世界でもトップクラスの優等生なんです。
特にすごいのが「ボトルtoボトル」。
使い終わったペットボトルを、もう一度ペットボトルに戻す「水平リサイクル」です。
これを社会実装できている国は、実は世界でも稀なんです
圧倒的な素材使用率
具体的な数字で見ると、その凄さがわかります。
たとえば、お茶の「綾鷹」。
このボトルのサステナブル素材使用率は80%を超えています。
これはグローバルの平均値を大きく上回る数字です。
なぜ日本だけこんなに高い数値が出せるのでしょうか。
成功の鍵
それは、日本特有の「分別文化」と「技術力」の融合です。
私たちは当たり前のようにラベルを剥がし、キャップを分けて捨てますよね。
このきれいな回収資源があるからこそ、またボトルに戻せるんです。
さらに、コカ・コーラは自治体と直接手を組んで「クローズドループ(資源が循環する輪)」を作っています。
ケミカルリサイクルという高度な技術投資も行っています。
日本の現場力と真面目な国民性が、サステナビリティを支えている好例といえます。

水資源への責任:「使った分以上」を自然に還す仕組み
水安全保障(Water Security)
飲料メーカーにとって、プラスチックと同じくらい、いやそれ以上に大事なのが「水」です。
水がなければ商売そのものができません。
これを「水安全保障」と呼びます。
涵養率(Replenishment Rate)157%の意味
ここで出てくるキーワードが「涵養(かんよう)」です。
簡単にいうと、使った水を自然に還すこと。
コカ・コーラのグローバル実績では、製品製造に使った水の1.5倍以上、つまり「涵養率157%」を達成しています。
「使った分より多く還す」なんて計算上どうやるの?と思いますよね。
これは、水源となる森林を整備したり、湿地を回復させたりすることで、地下に染み込む水の量を増やしているんです。
国内の事例
日本国内でもこの活動は活発です。
たとえば札幌などの工場では、使用量の5倍、つまり500%を超える水を涵養している事例もあります。
単に工場の蛇口を絞って節水するだけではありません。
工場がある流域全体の森を守ることで、持続可能な水資源を確保しようという、非常にスケールの大きい話なんです。
脱炭素への道と「Scope 3」の壁
排出量の9割は「社外」
最後に、CO2排出量(脱炭素)の話をしましょう。
実は、コカ・コーラが出すCO2のうち、工場やオフィスから出るのはほんの一部です。
約90%は「Scope 3」と呼ばれる領域。
つまり、原材料の調達、パッケージの製造、そして販売後の冷蔵庫での冷却や廃棄プロセスです。
ここを減らさないと意味がないんですが、自社だけではコントロールできないので、非常に高い壁となっています。

身近なイノベーション
それでも、日本ならではの技術で戦っています。
その代表が「自動販売機」です。
日本の自販機は、電力需要が少ない夜間に商品を冷やし切って、電力ピークの日中は冷却を止める「ピークシフト」機能が進んでいます。
また、実質再生可能エネルギーで稼働する「カーボンオフセット自販機」も増えています。
私たちが何気なく買っている自販機の中にも、脱炭素の技術が詰め込まれているんですね。
読者の疑問にお答えします(Q&A)
ここで、今回の調査でよく挙がる疑問について整理しておきます。
Q. 結局、プラスチックごみは減っているの?
A. グローバル全体で見ると、残念ながら「総量」は増えています。ビジネスが成長しているためです。しかし、日本では「リサイクルされる割合」が極めて高く、ゴミとして環境に流出する量は抑えられています。
Q. なぜリユース(瓶の再利用など)の目標を諦めたの?
A. インフラ構築のコストと、消費者の利便性のバランスが取れなかったためです。無理にリユースを進めるより、日本のように「高度なリサイクル」を徹底する方が、CO2削減効果が高い場合もあるという判断も働いています。
Q. 企業の発表データは信用できるの?
A. 数字自体は第三者機関の監査を受けているものが多いので、嘘ではありません。ただし、「都合の良い数字(リサイクル率など)」は大きく見せ、「都合の悪い数字(バージン・プラスチック総使用量など)」は目立たせない傾向があるため、多角的に見る必要があります。
結論:成長と環境負荷のデカップリングは可能か

総括
今回の調査を通じて見えてきたのは、日本市場における「現場力」の高さです。
リサイクルシステムの構築や水資源の管理において、日本は世界に誇れる実績を持っています。
これは素直に評価すべき点です。
しかし一方で、グローバル規模で見ると「プラスチックの絶対量を減らす」ことと「ビジネスを成長させる」ことの両立(デカップリング)には、まだ成功していません。
今後の視点
リサイクルはあくまで、出たゴミをどうするかという「対症療法」です。
ゴミそのものを出さない「リユース」や「新素材」という根本解決に、どこまで本気で投資できるか。
2025年以降、国際的なプラスチック規制条約などのルール作りが進む中で、本当の真価が問われることになるでしょう。
私たち消費者も、ただ「エコっぽい」イメージに流されず、こうした数字や背景を知った上で商品を選ぶ視点を持ちたいですね。
おすすめ商品
環境戦略の話って、どうしても
「企業が頑張る話」で終わってしまいがちですよね。
でも実は、一番インパクトが大きいのは、私たちの日常の選択だったりします。
ペットボトルを完全にゼロにするのは難しくても、
「毎日1本、減らす」ことなら今日からできる。
そんな現実的な一歩としておすすめなのが、
茶こし付きでそのまま使えるステンレス製マイボトルです。
お茶・紅茶・ハーブティーをそのまま淹れられて、
保温・保冷もできるので、結局ペットボトルを買わなくなるのがポイント。
「環境のために我慢する」ではなく、
便利だから続く──
それが一番強いサステナブルだと思います。








