・ミラノ・コルティナ五輪(2026年2月6日〜2月22日)は「既存・仮設会場93%」で“作らない五輪”を本気で試している
・一方で競技の公平性を支える人工雪(技術雪)や水資源、スポンサー問題など「エコの矛盾」も同時進行
・ボブスレー会場の新設は象徴的な論点。理想と現実の間で何が起きているか、観戦目線で整理する
りくりゅうペア(三浦璃来・木原龍一選手)、悲願の金メダルおめでとうございます!
あの演技には本当に震えましたね。日本中が熱狂したあの瞬間、選手たちが滑っていたリンクや会場が、実は「ある特別なミッション」を背負っていることをご存じでしょうか。
今回のテーマは「サステナビリティ(持続可能性)」です。
僕は普段、環境問題について勉強している学生なのですが、今回の2026年ミラノ・コルティナ大会は「史上最も持続可能な大会」を掲げているんです。
しかし、美しいスローガンの裏には、温暖化という現実との過酷な戦いや、いくつかの苦しい選択も隠されています。
今回は、熱戦の舞台裏にある「環境」というもう一つの戦いにフォーカスしてみます。

「作らない」という選択:93%が既存施設の衝撃

まず驚くべきなのが、会場の広さです。
これまでの五輪(ソチや北京など)は、一箇所に巨大なオリンピックパークを新設するスタイルが主流でした。
しかし今回は、ミラノからコルティナまで、なんと22,000平方キロメートルという広大なエリアに会場が点在しています。
これは関東地方がすっぽり入ってしまうくらいの広さです。
なぜそんなに離れているのか。
その理由は「あるものを使う」ためなんです。
分散開催が生んだ「ニュー・ノーム」
今回の大会では、競技会場の約93%が「既存施設」または「仮設」です。
新しい建物を作ると、建設時のCO2排出はもちろん、終わった後の維持費が大変ですよね。
いわゆる「負の遺産(ホワイトエレファント)」になるリスクを避けるため、イタリア全土にある既存の施設を最大限に活用しているんです。
歴史的遺産がそのままスタジアムに

イタリアならではの面白い取り組みもあります。
たとえば、開会式が行われる「サン・シーロ」や、閉会式の舞台となるヴェローナの「円形闘技場(アレーナ・ディ・ヴェローナ)」。
これらはイタリアが誇る歴史的なランドマークです。
歴史的な遺産をそのまま五輪の会場として使う。
新しく「箱モノ」を作るのではなく、今ある価値を再定義する。これが今回の大きな戦略なんですね。
「雪」と「水」のリアル:アルプスの危機と人工造雪

一方で、どうしても避けられない厳しい現実もあります。
それが「雪不足」です。
気候変動の影響を最もダイレクトに受けているのが、実は冬季五輪そのものなんですね。
迫りくる雪不足
アルプスの雪は年々減り続けています。
今回の大会でも、競技に使われる雪の90%以上が「人工雪」になると予測されています。
天然の雪だけで競技を行うのは、今の気候ではもう難しくなっているのが現実です。
人工雪のジレンマ
ここで問題になるのが「水」です。
安定したコンディションを作るために人工雪は欠かせませんが、それには膨大な水が必要です。
推計では、約230万から300万立方メートルもの水が使われると言われています。
リヴィニョなどの会場周辺では、貯水池を新しく作ったり、川から水を取ったりしています。
もちろん必要なことではあるのですが、地元の生態系や水資源への負担を心配する声も上がっています。
競技の公平性と環境保護、このバランスをどう取るかが大きな課題ですね。
エネルギーの脱炭素化:バイオ燃料と再生可能エネルギー

エネルギーに関しては、かなり野心的な取り組みが進んでいます。
大会期間中に使われる電力は、基本的に100%再生可能エネルギー(再エネ)で賄われています。
これは「再エネ証書」という仕組みを使って証明されているものです。
発電機の燃料革命
個人的に注目しているのが、発電機の燃料です。
山岳部で行われる競技では、どうしても送電線だけでは足りず、発電機が必要になります。
これまでは軽油(ディーゼル)を使っていましたが、今回は「HVO(水素化植物油)」というバイオ燃料が導入されました。
これにより、CO2排出量を従来の70〜90%も削減できるそうです。
ただ、一つ議論になっている点もあります。
この燃料の供給元が、化石燃料の大手企業である「Eni社」だということです。
環境団体からは「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)ではないか?」という厳しい視線も注がれています。
企業の実績作りなのか、本質的な変革なのか。僕たちもしっかり見ていく必要がありますね。
議論を呼んだ「唯一の」巨大建設:ボブスレー会場の真実
「既存利用」を掲げる今大会で、唯一にして最大の問題となったのが、ボブスレー会場です。
コルティナ・ダンペッツォにある「スライディング・センター」の再建問題は、ニュースで見たことがある人もいるかもしれません。
コルティナのカラマツ林とコスト問題

当初、IOC(国際オリンピック委員会)はこう提案していました。
「新しい施設を作るのは環境にもお金にも負担がかかるから、隣のオーストリアなど、すでにある海外の施設を使おう」
とても合理的な提案ですよね。
しかし、イタリア側は「国内開催」にこだわりました。
結果として、建設が強行されることになったのですが、その代償は小さくありませんでした。
- 森林伐採:建設のために、樹齢を重ねた数百本のカラマツが切られました。
- コスト増:建設費は当初の予算を大幅に超え、1億2000万ユーロ以上になっています。
「93%は既存利用」という素晴らしい成果がある一方で、このボブスレー会場だけは、旧来型の開発優先の姿勢が見え隠れしてしまいました。
環境負荷への懸念が残る、今大会の「矛盾」を象徴する場所とも言えます。
大会のレガシー:終わった後に何が残るのか?

大会が終わった後、施設はどうなるのでしょうか。
ここにも「サステナビリティ」の視点が生かされています。
選手村が学生寮へ変身
ミラノのポルタ・ロマーナ地区に作られた選手村。
ここは大会が終了した後、なんと大学生のための寮として生まれ変わります。
ミラノでは学生向けの住宅不足が深刻な問題になっているので、これはとても実用的なレガシー(遺産)になりますよね。
家具や備品の「セカンドライフ」
また、「MICO26再利用プログラム」という仕組みも動いています。
大会で使われた家具やスポーツ用品は、そのまま廃棄されることはありません。
地域の学校やスポーツクラブへ寄付され、第二の人生(セカンドライフ)を送ることになっています。
「使い終わったらゴミ」ではなく、次の誰かの役に立つ。
こういう循環型の仕組み(サーキュラーエコノミー)が、大規模なイベントで当たり前になるのは嬉しいことです。
疑問を解消!五輪環境対策Q&A
ここで、ニュースを見ていて疑問に思いそうなポイントをQ&A形式でまとめてみました。
Q1:なぜ会場がそんなに離れているの?移動でのCO2排出は大丈夫? A1:新しい施設を作らないために、既存の施設を選んだ結果、会場が分散しました。移動によるCO2排出は確かに課題ですが、巨大施設を新築する時のCO2排出量に比べれば、トータルでの環境負荷は低いと計算されています。
Q2:人工雪って環境に悪いの? A2:水と電気を大量に使うため、環境負荷はゼロではありません。しかし、暖冬で雪が降らない中で競技を公平に行うには不可欠です。今回は再エネ電力や効率的な造雪機を使うことで、可能な限り負荷を減らす努力をしています。
Q3:結局、本当に「エコな五輪」と言えるの? A3:100点満点ではない、というのが正直なところです。ボブスレー会場の建設などは批判されています。ただ、93%という高い既存施設利用率や、再エネ100%の導入など、過去の大会に比べて「基準を変えよう」という強い意志があるのも事実です。
おわりに:未来のオリンピックへの試金石

ミラノ・コルティナ五輪の環境対策について、良い面も悪い面も見てきました。
ボブスレー会場のような課題は確かに残りました。
でも、「新しい建物を作らず、あるものを使う」「終わった後の使い道を先に決める」という姿勢は、間違いなく次世代のモデルケースになります。
僕たちが観るべきもう一つのポイント。
それは、熱い競技を応援しながら、ふと「この雪はどうやって作られたのか?」「この会場は大会後どうなるのか?」と思いを馳せてみることかもしれません。
それも、これからのスポーツ観戦の新しいマナーなのかもしれないな、と僕は思っています。
最後まで読んでくれてありがとうございました!








