・ゼオライト系吸着材で“省エネ&長寿命”を狙う、プラネットセーバーの強みを具体的に解説します。
・回収CO2の農業・合成燃料(e-Fuel)活用から、炭素クレジット(GX-ETS等)の広がりまでまとめます。
最近、ニュースなどで「脱炭素」という言葉をよく耳にするようになりましたね。
地球温暖化を止めるためには、二酸化炭素(CO2)の排出を減らすだけでは足りないと言われています。
そこで世界中で急ピッチで研究が進んでいるのが、空気中から直接CO2を回収する技術です。
今回は、サステナビリティを学ぶ僕がとても注目している、日本発のスタートアップ「プラネットセーバー」の革新的な技術について、わかりやすくお話ししていきます。
少し難しいイメージがあるかもしれませんが、魔法の石のような素材を使った、とてもワクワクする技術なんですよ。

はじめに:世界が注目する「CO2直接回収(DAC)」とは?
まずは、ベースとなる知識から整理していきましょう。
DAC(ダック)とは、Direct Air Captureの頭文字をとった言葉です。
日本語にすると、空気中から直接CO2を捕まえて回収する技術のことですね。
すでに大気中に広がってしまった過去のCO2を減らすことができるため、「ネガティブ・エミッション(マイナス排出)技術」の切り札として期待されています。
ここで、「木を植えるだけじゃダメなの?」と疑問に思うかもしれません。
たしかに森林保護や植林もとても大切です。
しかし、植物が育つには広大な土地と長い時間が必要になりますよね。
一方でDACという機械のシステムなら、場所を選ばずに設置できるというメリットがあります。
砂漠の真ん中や、工場の空きスペースでも稼働できるわけです。
さらに、機械で回収するので「どれくらいのCO2を減らせたか」という効果を正確に計算しやすいという強みもあります。

日本発のトップランナー「プラネットセーバー」のすごさ
世界中で開発競争が起きているDACですが、日本のプラネットセーバーという企業が持つ技術は、従来の常識を覆す「第2世代」と呼ばれています。
いったい何がそんなにすごいのか、3つのポイントで見ていきましょう。
従来の技術が抱えていた大きな壁
これまでの第1世代のDAC技術には、超えなければならない高い壁がありました。
それは、コストとエネルギーの問題です。
従来の方式では、薬品のような液体を使ってCO2を吸収させることが多かったんです。
しかし、その薬品からCO2を取り出して再利用するためには、なんと900度近い高温で加熱する必要がありました。
これでは、CO2を減らすために大量のエネルギーを使ってしまうという矛盾が起きてしまいます。
また、システムを動かすために大量の水を消費してしまうことも課題でした。
水不足の地域では稼働させることができませんよね。
さらに、フィルターの役割をする吸着剤の寿命が数年と短く、頻繁に交換する費用も重くのしかかっていました。

「ゼオライト」がもたらす大ブレイクスルー
こうした課題を一気に解決したのが、プラネットセーバーの技術です。
彼らは液体ではなく、無機鉱物である「ゼオライト」という固体の素材を活用しました。
ゼオライトは、目に見えない小さな穴がたくさん空いているスポンジのような構造をした魔法の石です。
この小さな穴のサイズをナノレベルで調整した「ハイシリカゼオライト」という特別な素材を使っています。
空気中にはCO2だけでなく、たくさんの水分も含まれていますよね。
普通の素材だと水分も一緒に吸い込んでしまって効率が落ちてしまうんです。
ですが、この特殊なゼオライトは水分をうまく避けながら、ターゲットであるCO2だけを効率よく捕まえることができます。
圧倒的な長寿命と省エネ設計
さらに嬉しいのが、その耐久性の高さです。
ゼオライトはもともと石や砂の仲間なので、熱や化学変化にとても強い性質を持っています。
そのため、吸着材の寿命はなんと約10年にも達するんです。
交換の頻度がぐっと減るので、運用コストを大幅に下げることができますね。
そして一番の革命は、エネルギーの消費を抑えられたことです。
ゼオライトが捕まえたCO2を剥がして回収する作業(脱離)のときに、900度もの高温は必要ありません。
圧力の操作と、60度程度の低い熱だけでCO2を分離することができるんです。
専用の巨大なボイラーを用意する必要がないため、環境にもお財布にも優しい設計になっています。

回収したCO2はどう使われる?注目の活用アイデア
さて、空気中から回収したCO2はどうなるのでしょうか。
ただ地中に埋めて捨てるだけではありません。
プラネットセーバーは、回収したCO2を「資源」として使うアプローチにも力を入れています。
農業(ビニールハウス)の肥料として大活躍
みなさんが食べているトマトやイチゴなど、ビニールハウスで育てる野菜を想像してみてください。
植物は光合成をして育つので、ハウスの中のCO2濃度が下がると成長が遅くなってしまいます。
そのため、農家さんはわざわざお金を払ってCO2のボンベを買っているんです。
もし、ビニールハウスの横に小型のDACユニットを置けたらどうでしょう。
空気中から集めたCO2を、そのままパイプでハウスの中に送ることができますよね。
重いボンベを運ぶ輸送コストもかかりませんし、必要な時に必要な分のCO2を安定して作物に供給できるようになります。
工場の「もったいない廃熱」を再利用
工場やゴミ処理場などからは、常にたくさんの熱が捨てられています。
60度から150度くらいの熱は、発電などに使うには温度が低すぎるため、これまではそのまま大気に放出されていました。
まさに「もったいない廃熱」です。
先ほど、プラネットセーバーのシステムは60度程度の低い熱で動かせるとお話ししましたよね。
つまり、この捨てられていた工場の廃熱をパイプで繋げば、DACを動かすエネルギーとして丸ごと再利用できるわけです。
燃料代をかけずにCO2を回収できる、とても素晴らしい相乗効果が生まれます。

未来のエネルギー「e-Fuel(合成燃料)」の原料に
飛行機や大きな船は、電気バッテリーだけで動かすのがまだまだ難しい分野です。
そこで、石油に代わる未来の燃料として期待されているのが「e-Fuel(合成燃料)」です。
この夢の燃料を作るためには、クリーンな水素と、空気中などから回収したCO2が必要になります。
プラネットセーバーの低コストなDAC技術は、この未来の燃料工場へCO2を供給する重要な役割を担うと期待されています。

CO2を「価値(資産)」に変える!炭素クレジット戦略
技術のすごさはお分かりいただけたかと思いますが、これをビジネスとして成り立たせることもサステナビリティには重要です。
回収したCO2を、どのようにしてお金(収益)に変えていくのかを見ていきましょう。
日本国内での「J-クレジット」や「GX-ETS」展開
今、日本ではCO2を減らした量を国が認証する「J-クレジット」という制度があります。
DACで回収したCO2も、このクレジットとして認められるような新しい仕組みづくりが進んでいるところです。
大企業は自社の事業でどうしても出てしまうCO2を、このクレジットを買うことで相殺(オフセット)しようとしています。
特に日本が推進している「GX-ETS」という排出量取引の市場では、純粋に空気からCO2を取り除いたDACのクレジットは、とても高い価値がつけられる可能性があります。
オーストラリアとの壮大な国際プロジェクト
一方で、日本国内には大きな弱点があります。
それは、回収した大量のCO2を地中深くに長期間貯蔵しておくための場所(地層)が少ないことです。
そこでプラネットセーバーは、広大な土地を持つオーストラリアの企業と提携を結びました。
現地で大規模にCO2を回収し、そのまま広大な地下空間に貯蔵するという、ギガトン級の壮大なプロジェクトが進められています。
日本の優れた技術と、海外の広大な土地を組み合わせた賢い戦略ですね。
読者の疑問に答えるQ&A
ここまで読んでいただいて、いくつか気になる点があるかもしれません。
よくある疑問をQ&A形式でまとめてみました。
・Q. DACの機械を入れるコストは高くないの? ・A. 現在はまだ開発段階のため安くはありません。しかし、部品を規格化して工場で大量生産(モジュール化)することで、将来的に大幅なコストダウンを目指して計画が進んでいます。
・Q. ゼオライトって安全な物質なの? ・A. はい、とても安全です。ゼオライトは自然界にも存在する鉱物の一種で、水質浄化や猫砂など、私たちの身近な生活のなかでもすでにたくさん使われている無害な物質です。
・Q. 私たちの生活にどう影響するの? ・A. すぐに目の前の生活が変わるわけではありませんが、農業に活用されて美味しい野菜が安く手に入るようになったり、将来乗る飛行機の燃料がクリーンになったりする形で、間接的に恩恵を受けることになります。
まとめ:プラネットセーバーが描く100ドル/トンの未来
今回は、日本発のDAC技術「プラネットセーバー」についてお話ししました。
ゼオライトという魔法の石を使い、低い熱で効率よくCO2を回収する仕組みは、これまでの常識を変える大発明です。
彼らの最終的な目標は、モジュールの大量生産などを通じて、CO2の回収コストを「1トンあたり100ドル以下」まで引き下げることです。
100ドルを切れば、世界中の多くの企業が導入しやすくなり、地球規模で一気に脱炭素が進むと言われています。
物質としてのCO2を農業や燃料に役立てながら、価値としてのクレジットを生み出してビジネスを回していく。
この両輪を回すプラネットセーバーの挑戦から、今後も目が離せませんね。








