この記事では、ソフトバンクが進める再生可能エネルギー活用、基地局の省エネ化、HAPSなどのサステナビリティ戦略をわかりやすく解説します。
良い取り組みだけでなく、Scope3排出量の増加など今後の課題も整理し、私たちの暮らしとの関係を考えます。
毎日何気なく使っているスマートフォンやインターネット回線ですが、その裏側について考えることはあまりないかもしれません。
新しいスマートフォンや生成AIサービス、クラウドサービスが次々と登場し、私たちの生活はどんどん便利になっています。
しかし、AIの普及などでデータ通信量が増えるにつれて、電力消費などの環境負荷が大きな課題になっています。
今回は、AI時代のインフラ構築を進めるソフトバンクが、環境問題や社会課題にどう取り組んでいるのかを公式レポートなどの事実をもとに整理してみました。
企業の一方的な取り組みとしてではなく、私たちの暮らしや社会とどうつながっているのかを一緒に考えてみたいと思います。

AI時代と通信インフラ:便利さの裏側にある課題

ソフトバンクというと、携帯電話の会社というイメージが強いかもしれません。
しかし現在のソフトバンクは、自らを「AI時代の次世代社会インフラプロバイダー」と再定義しています。
単に電波を届けるだけでなく、社会の基盤となるインフラをAIの力で構築する企業へと変化しているのです。
ここで少し考えてみたいのが、便利さの裏側にある社会構造的な課題です。
私たちが動画を見たり、生成AIを使ったりするとき、目に見えないところで膨大なデータがやり取りされています。
このデータトラフィックの急増は、通信設備やデータセンターでの膨大な電力消費を引き起こします。
テクノロジーの進化は私たちの生活を便利にする一方で、そのままでは地球環境に大きな負担をかけてしまうというジレンマを抱えているのです。
ソフトバンクの環境への挑戦:脱炭素と新技術
こうした課題に対して、ソフトバンクは環境への負荷を減らすための具体的な挑戦を始めています。
大きく分けて、地上での取り組みと、空からのアプローチがあります。
再生可能エネルギーと基地局の進化

ソフトバンクは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」という大きな目標を掲げています。
この目標に向けて、自社の事業活動で使う電力を再生可能エネルギーに切り替える動きを加速させています。
さらに面白いのが、AIを活用した基地局の制御システムです。
通信があまり使われない時間帯に、AIが自動で基地局の電波を制御してスリープ状態にする技術が導入されています。
これにより、年間で約500万kWhもの電力削減が見込まれているそうです。
また、風力や太陽光パネルを組み合わせた「再エネ自家発電型基地局」の開発も進んでいます。
これは環境に優しいだけでなく、災害時に電力網がストップしても通信を維持しやすくなるという強みを持っています。
空飛ぶ基地局「HAPS」と次世代電池

地上だけでなく、空からのアプローチも進められています。
それが、成層圏から通信を提供する「HAPS」という空飛ぶ基地局の構想です。
成層圏に無人航空機を飛ばして広範囲に電波を届ける仕組みです。
これが実用化・普及すれば、地上設備だけに頼らない通信網づくりが可能になり、山間部や離島、災害時の通信確保にも役立つ可能性があります。
山間部や離島など、これまで電波が届きにくかった場所にも通信環境を整えやすくなります。
ただ、成層圏は極寒の過酷な環境です。
そこでソフトバンクは、極低温の環境下でも高い性能を発揮する高エネルギー密度の「次世代電池」の開発にも力を入れています。
人と社会へのアプローチ:誰も取り残さない環境づくり
サステナビリティと聞くと環境問題ばかりをイメージしがちですが、人と社会へのアプローチも重要なテーマです。

多様性を活かす組織づくり
ソフトバンクは、多様な人材が活躍できる組織づくりに力を入れています。
たとえば、2035年度までに女性管理職の比率を20%以上にするという長期目標を掲げています。
また、男性の育児休職取得率も上昇しており、2024年度はSB単体で78.2%となっています。
誰もが働きやすい環境を整えることは、企業の成長に欠かせない要素になっています。
さらに、同性パートナーにも配偶者と同じ福利厚生を適用するなど、LGBTQ+への先進的な対応も行っています。
デジタル格差を埋める教育と支援

テクノロジーが進化しても、それを取り残されてしまう人がいては意味がありません。
ソフトバンクは、年間140万人が参加するスマホ教室を全国で開催しています。
これにより、高齢者などスマホの操作に不慣れな人たちのデジタルリテラシー向上をサポートしています。
また、スポーツの分野ではAIによる支援アプリ「AIスマートコーチ」を提供しています。
発達障害のある方などが生活のリズムを整えるための視覚的スケジュールアプリ「アシストガイド」なども開発しています。
通信の力を使って、具体的な社会課題を解決しようとする姿勢が見えてきます。
透明性を保つ仕組み(Governance)と見えてきた課題

企業が正しい方向に進むためには、経営を監視し透明性を保つ仕組みが欠かせません。
ソフトバンクでは、取締役会の過半数を独立した社外取締役で構成しています。
身内だけでなく、外部の客観的な視点を入れることで、公正な意思決定ができる体制を整えているのです。
昨今は新NISAの普及もあり、企業の持続可能性やガバナンス体制を重視して投資先を選ぶ視点も一般的になってきました。
また、AIの活用が広がるにつれて心配になるのがプライバシーのリスクです。
ソフトバンクでは、サービスを開発する際に「PIA(プライバシー影響評価)」の実施を義務付けており、個人情報の保護を徹底しています。
しかし、良いことばかりではなく、今後の大きな課題も見えてきています。
それは、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量が増加傾向にあるという事実です。
以下の表に、排出の枠組みを簡単に整理しました。
| 排出の枠組み | 具体的な内容 | ソフトバンクの現状 |
| Scope 1・2 | 自社のオフィスや基地局での直接・間接的な電力消費 | 再エネ導入や省エネ化により順調に削減できている |
| Scope 3 | スマホの製造や利用、データセンター建設など事業の川上から川下まで | AI需要の拡大や販売機器の増加により排出量が増えている |
自社内での努力(Scope 1・2)は結果を出しているものの、社会全体でAIを活用するためのデータセンター構築などにより、全体としての排出量(Scope 3)は増えてしまっているのです。
ここをどう抑え込んでいくかが、今後の最も難しい課題と言えそうです。
よくある質問(Q&A)
ここでは、ソフトバンクの環境対策について、よく疑問に思われがちなポイントをQ&A形式で補足します。
Q: ソフトバンクの環境対策で、具体的に効果が出ているものは何ですか?
A: 再生可能エネルギーの導入拡大や、AIを使った基地局の効率的な制御などにより、自社の事業活動に伴う温室効果ガス排出量(Scope 1 および 2)を、2021年度から2024年度にかけて約44.5%削減することに成功しています。
Q: 使い終わったスマートフォンはどう処分すればいいですか?
A: 古い携帯電話や通信機器の回収は、2001年から通信事業者共通の取り組みとして行われています。ソフトバンクの店頭でも、メーカーを問わず本体や電池パックの分別回収を受け付けており、貴重な資源のリサイクルにつながっています。
Q: 企業のガバナンス体制とは何ですか?
A: 企業が不正を防ぎ、経営を透明かつ公正に行うための仕組みのことです。ソフトバンクでは、社外取締役を多く配置することで、客観的な視点からプライバシー管理の徹底や経営の意思決定を行っています。
Q: AIが普及すると、なぜ環境への負担が増えるのですか?
A: AIに学習させたり、質問に答えさせたりするためには、膨大な計算処理が必要になります。そのため、24時間稼働する大規模なデータセンターが必要となり、そこで消費される電力と冷却用のエネルギーが大きな環境負荷を生み出しています。
Q: Scope 3(サプライチェーン全体の排出量)を減らすのが難しいのはなぜですか?
A: 自社のオフィスや設備と違い、Scope 3は「部品を作っている工場」や「スマホを使っているお客さま」など、自社で直接コントロールできない領域が含まれるからです。社会全体で協力して取り組む必要があります。
まとめ:私たちの暮らしとどうつながるのか
AIや大容量通信といったテクノロジーは、間違いなく私たちの暮らしを便利にしてくれます。
しかしその一方で、見えないところで膨大なエネルギーが消費されているという現実があります。
今回のレポートを整理して見えてきたのは、ソフトバンクがそのジレンマに対して真正面から向き合っている姿です。
基地局の省エネ制御や空飛ぶ基地局「HAPS」など、技術の力を使って環境問題を解決しようとしています。
ただ、サプライチェーン全体での環境負荷が増加しているという、見過ごせない課題も残されています。
一生活者として、私たちが通信サービスを選んだり、古い端末をショップでリサイクルに出したりする際に、こうした企業の裏側の取り組みを知っておくことは大切です。
テクノロジーの便利さを享受するだけでなく、それが地球とどうつながっているのかを考えることが、これからの社会をつくる一つの視点になるのではないでしょうか。

