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ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由

ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由
サントリーのサステナは“イメージ戦略”じゃない。
「天然水の森(ウォーター・ポジティブ)」と技術投資で、原料と水を守る“生存戦略”だった。
FtoP水平リサイクル、白州のP2G水素、愛鳥活動まで、ロジックで読み解く。

普段、コンビニで何気なく手に取る「伊右衛門」や、週末の楽しみである「ザ・プレミアム・モルツ」。

僕たち学生にとっても身近なこれらの商品ですが、その裏側にどんな「仕掛け」があるか考えたことはあるでしょうか。

実は、美味しいお酒や水を作るには、「きれいな水」があるだけでは足りないんです。

大学で環境工学を専攻している僕が、今回はサントリーという企業の裏側にある「ロジック」について話したいと思います。

検索トレンドや流行りのエコではなく、もっと根本的な、企業の「本気」の話です。

ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由
目次

ただの植林ではない。「天然水の森」が目指す数値目標

ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由

「環境保護」というと、なんとなく「木を植えること」だと思っていませんか。

僕も最初はそう思っていました。

でも、サントリーのアプローチはもっと科学的で、数字に基づいています。

彼らが掲げているのは「ウォーター・ポジティブ」という概念です。

「使った水」より「還す水」の方が多い

これは簡単に言うと、「事業で汲み上げた水よりも、多くの水を自然に還す」という約束です。

驚くべきことに、サントリーは国内工場で汲み上げる水の「2倍以上」をすでに涵養(かんよう:水が地下に染み込むこと)しています。

ただ消費するだけでなく、プラスにして返しているわけですね。

科学で「ふかふかの土」を作る

では、どうやって水を還すのか。

ここで重要なのが「土壌」です。

単に木を植えればいいわけではありません。

  • 地質調査を徹底的に行う
  • その土地に合った樹種を選ぶ
  • 土壌を分析し、水が染み込みやすい「ふかふかの土」を作る

こういった地道な作業の積み重ねで、雨水が地下深くに浸透し、数十年、数百年かけて良質な地下水になります。

感覚ではなく、データと科学に基づいた「森の経営」が行われているのです。

技術屋のこだわり。世界初の「F-to-P」リサイクルとは?

ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由

次に、僕が個人的に「さすが技術屋だな」と唸ったのが、ペットボトルのリサイクル技術です。

分別や回収が大事なのはもちろんですが、サントリーは技術でブレイクスルーを起こしています。

ペットボトルをペットボトルに戻す

「ボトルtoボトル」、いわゆる水平リサイクルです。

使い終わったペットボトルを、また新しいペットボトルに生まれ変わらせる。

言葉にすると簡単ですが、不純物を取り除き、新品同様の透明度と強度を持たせるのは至難の業です。

CO2を大幅削減する「F-to-P」技術

ここで登場するのが、世界初の実用化技術「F-to-P」です。

従来の工程を大幅に短縮することで、以下のような成果を出しています。

  • リサイクル工程でのCO2排出量を60〜70%削減
  • 石油由来の原料を新規に使わない

2030年には「石油由来の原料ゼロ」を目指しているそうです。

かなり野心的な目標ですが、今の技術革新のスピードを見ていると、あながち不可能ではないと感じさせられます。

工場で水素を作る?「脱炭素」への意外なアプローチ

ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由

サステナビリティの課題で、避けて通れないのが「エネルギー」の問題です。

飲料工場では、殺菌や洗浄のために大量の「熱」が必要になります。

電気は太陽光パネルなどで再生可能エネルギー化しやすいですが、「熱」をどう脱炭素化するかは、産業界全体の難題でした。

山梨県・白州工場での挑戦

そこでサントリーが目をつけたのが「グリーン水素」です。

山梨県の白州工場では、「P2G(Power to Gas)システム」の実証実験が進んでいます。

これは、水を電気分解して水素を作り、それを燃料として熱を生み出す仕組みです。

  • 原料は「水」と「再生可能エネルギー」だけ
  • 燃やしてもCO2が出ない

まるでSFのような話ですが、工場の一角で未来のエネルギーシステムが稼働し始めています。

再生可能エネルギー100%導入は、もはや彼らにとって当たり前のラインになりつつあるようです。

鳥は嘘をつかない。生物多様性と「愛鳥活動」

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ビジネスの話から少し離れますが、「鳥」の話をさせてください。

サントリーは50年以上、「愛鳥活動」を続けています。

一見、飲料メーカーのビジネスとは関係なさそうに見えますよね。

でも、ここにも明確なロジックがあります。

生態系のピラミッドを守る

「Today Birds, Tomorrow Humans(鳥の住める環境は人間にとっても住みやすい)」

これが彼らの哲学です。

イヌワシやクマタカといった、生態系の頂点に立つ鳥が住める森。

それはつまり、小動物や昆虫、多様な植物が生息している豊かな森であるという証明になります。

豊かな森が良い水を育む

豊かな生態系がある森の土壌は、最高品質の水を育みます。

つまり、鳥を守ることは、巡り巡って「商品の品質(水)」を守ることに直結しているのです。

「鳥は嘘をつかない」。

環境の健全性を測るバロメーターとして、鳥たちと向き合っているわけですね。

美味しいコーヒーを飲み続けるために

ウイスキーの味が変わる?サントリーが「森」を経営する本当の理由

最後に、僕たち消費者にとっても切実な「2050年問題」について触れておきます。

気候変動が進むと、今まで通りに作物が育たなくなるリスクがあります。

コーヒーや大麦が消える?

僕たちが毎日飲んでいるコーヒーや、ビールの原料である大麦。

これらも気候変動の影響をダイレクトに受けます。

「ある日突然、好きな飲み物が飲めなくなる」

そんな未来を避けるために、サントリーは「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」に挑戦しています。

土壌を回復させる農業へ

これは、単に作物を収穫するだけでなく、農業を通じて「土壌を回復させる」という考え方です。

  • 化学肥料に頼りすぎない
  • カバークロップ(被覆作物)を使って土を守る

また、サプライチェーン全体での人権問題にも目を向けています。

児童労働などのない、クリーンな環境で作られた豆や麦を使う。

一杯のコーヒーの向こう側に、働く人々の笑顔や、健康な土壌があることを想像してみてください。

Q&A:疑問を整理してみる

ここまで読んで、いくつか疑問が湧いてきたかもしれません。

僕なりに調べて整理してみました。

Q1. こういう活動をすると、商品の値段が上がるんじゃないの?

A. 短期的にはコストかもしれませんが、長期的には「コストダウン」と「安定供給」に繋がります。

たとえば、リサイクル技術が確立すれば、原油価格の変動に左右されずに原料を調達できます。 また、水資源を守ることは、将来的に水不足で工場が止まるリスク(莫大な損失)を防ぐことになります。 これは慈善事業ではなく、合理的な投資だと言えます。

Q2. 本当に効果があるの?ただのアピール(グリーンウォッシュ)では?

A. 第三者機関による検証を受けており、数値で管理されています。

サントリーは「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」などの国際的な枠組みにいち早く賛同しています。 「なんとなく良いこと」ではなく、科学的根拠に基づいたデータを公開している点は、信頼に値すると僕は感じています。

Q3. 僕たち消費者にできることはある?

A. 「選ぶこと」と「正しく捨てること」です。

リサイクル素材を使った商品を選んだり、飲み終わったペットボトルのキャップとラベルを剥がしてリサイクルに出したり。 僕たちの小さな行動が、彼らの技術と噛み合ったとき、サーキュラーエコノミー(循環型経済)は完成します。

企業の「生存戦略」としてのサステナビリティ

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今回、調査報告書を読み込んでみて感じたのは、サントリーの取り組みが非常に「ロジカル」だということです。

「環境に優しい企業でありたい」という想いはもちろんあるでしょう。

しかしそれ以上に、「ビジネスを100年先まで続けるための生存戦略」としてサステナビリティを捉えているように見えました。

水がなくなれば、商売はあがったりです。 原料が育たなければ、商品は作れません。

だからこそ、本気で森を経営し、技術を磨く。

僕たちが商品を選ぶとき、味や価格はもちろん大事です。

でもこれからは、その背景にある「企業の姿勢」や「生存戦略」も、判断基準の一つに加えてもいいのかもしれません。

次に天然水やウイスキーを飲むときは、その液体の向こう側にある森や、最先端の技術に、少しだけ思いを馳せてみてください。

きっと、いつもより少しだけ、味わい深く感じるはずです。

おすすめ商品

ぜひ、美味しい飲み物を楽しむひとときに使ってみてください。
毎日の一杯が、いつもより少しだけ特別に感じられるはずです。



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